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プラズマの発光スペクトル測定
光ファイバー入力のCCD分光器を使用すれば,蛍光鉱石,生物発光,LED光源,蛍光灯,ハロゲン光源などの発光スペクトルを簡単に測定することができます. ここでは,科学おもちゃとして安価に入手できるプラズマボールを例に,プラズマ発光のスペクトル測定について説明します [1].
[1] 大津元一監修,田所利康著:「イラストレイテッド 光の実験」, 朝倉書店 (2016).
プラズマボールの発光スペクトル測定
科学博物館などでよく目にするプラズマボールですが,USB電源で光る比較的安価な小型プラズマボールが科学おもちゃとして出回っています. 基本構成は,ガラス球の中心に電極が入ったプラズマ発光部と電極に高周波の高電圧を印加する電源部です. ガラス球には,ネオンやキセノンなどの不活性ガスが封入されていて,高周波の高電圧印加によって不活性ガスが電離し,プラズマが発生します. その際,電離したガスを伝って電流が流れて放電し,プラズマ発光と呼ばれる淡い光を発します.
プラズマボールのプラズマ発光は,意外に弱く,部屋を暗くしないときれいに見えません. 加えて,発光場所が絶えず動くので,撮影では,高感度で比較的速いシャッターを切る必要があります. 糸状のプラズマ発光(プラズマ放電チャネル)をブレずに写すためには,シャッター速度は遅くとも1/60秒が必要です. また,室内が明るいと,図1のようにガラス球の表面に背景が映り込むので,部屋を暗くして撮影します.
図3に光ファイバー入力のCCD分光器を使用した発光分光の装置構成例を示します. 装置構成は単純です.光ファイバー先端をプラズマボールの近くに固定して測定しています. プラズマが絶えず動き強度が揺らぐため,露光時間を長くして強度の平均化を図っています.図4は実際に測定しているようすです.
図5に,図3の装置構成で測定したプラズマボールの発光スペクトルを示します. 太陽や白熱電球のように,ある波長範囲で連続分布したスペクトルを連続スペクトルと呼ぶのに対して,プラズマ発光のように,とびとびの波長に不連続な輝線を含むスペクトルを線スペクトルといいます. 線スペクトルを測定する場合,波長分解能が高い分光器を用いる必要があります. 本測定では,入射スリット幅:10µm(波長分解能:約1nm)のCCD分光器(USB-4000)を用いました.
理科年表には,不活性ガスのスペクトル線の波長が記載されています. 図6で,可視領域におけるプラズマボールの線スペクトル測定結果と理科年表に記載されている主な不活性ガスのスペクトル線の波長を比較します.
図6に示した不活性ガスの線スペクトル波長のうち白線で表したものが測定スペクトルのピーク波長と一致したものです. 500nm付近から短波長側ではキセノンの線スペクトルと,長波長側ではネオンの線スペクトルとよく一致していることがわかります. この結果から,少なくとも,ガラス球内の封入ガスにはネオンとキセノンが含まれていることがわかります. また,プラズマ発光のうち,赤みを帯びたものはネオン由来,放電チャネルの青白い糸状の発光はキセノン由来と考えてよいでしょう.
図7に同じプラズマボールの発光スペクトルをカメラ分光器で撮影したスペクトル画像と図6のスペクトルの比較を示します.
スペクトル画像の輝線は,CCD分光器で測定した線スペクトルの波長とよく一致しています.
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