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光源の放射強度スペクトル測定
光ファイバー入力のCCD分光器を使用すれば,光源の発光スペクトルを簡単に測定することができます. さらに,標準光源を使って分光器の感度校正をすれば,光源の放射強度スペクトルが得られます. ここでは,ハロゲンタングステンランプを例に,放射強度スペクトルの測定について説明します [1].
[1] 大津元一監修,田所利康著:「イラストレイテッド 光の実験」, 朝倉書店 (2016).
ハロゲン光源の放射強度スペクトル測定
金属を熱すると,温度に応じた色の光が放射されることが知られています.
例えば,図1のように金属針の先をガスバーナーであぶると,温度に依存した放射光の色を観察することができます.
つまり,炎にさらされた先端は温度が高く,白い光を放ちますが,炎から遠ざかるに従って温度が下がっていき,放射光の色は白から黄色,黄色から赤,赤から黒に変化します.
ここでは,ハロゲンタングステンランプの輝度,すなわちフィラメントの温度を変えながら,フィラメントからの放射光の色とその放射強度スペクトルの変化を見ていきましょう.
図2は測定に使用した顕微鏡用ハロゲンタングステンランプです. 最大電流を流したときの色温度は約3200Kです. ランプハウスの電源ケーブルを延長し,顕微鏡から離した場所でも顕微鏡の光源ボリュームを使ってランプの明るさを変えられるようにしました.
図3に光ファイバー入力のCCD分光器を使用した光源の放射強度スペクトル測定系の構成例を示します. 広い温度範囲での放射強度スペクトルを測定するためには,できるだけ広い波長範囲で測定する必要があります. 本測定では,紫外可視用のCCD分光器と近赤外用のCCD分光器を使い,約350 ~ 1700nmの波長領域で測定を行いました. 光ファイバー先端を光源の近くに配置した2分岐ファイバーを使ってサンプリングした放射光を二つに分けて,2台の分光器に同時に放射光を導入しました.
分光器の回折格子やCCD検出器には,効率や感度に波長分布があるため,NIST(National Institute of Standards and Technology,アメリカ国立標準技術研究所)準拠校正データ付きのハロゲンタングステン標準光源を使って,事前にCCD分光器の感度校正を行い,放射強度スペクトルを求めます.
図5(a) ~ (d)にランプの輝度を変えながら測定したタングステンフィラメントの温度に依存した放射強度スペクトルと放射光の色を示します. (a) ~ (d)の順に,フィラメントに流れる電流が増加して温度が高くなっています. 図5の放射強度スペクトルは,最大強度を1に規格化してます.
図5(a) ~ (d)のスペクトルを見比べると,フィラメントの温度上昇に伴い,ピーク波長が短波長側にシフトしていることがわかります. つまり,温度が高いほど,全放射光の中で可視光の比率が増えていきます. 図5では,放射強度を規格化して表示していますが,実際のスペクトル測定では,(d)のスペクトルは(a)のスペクトルに比べ二桁以上強いので,フィラメントから受光ファイバー端までの距離を離して,分光器のシグナルが飽和しないように光量調整しました.
外から入射された全ての波長の電磁波を完全に吸収し,また放射できる物体を黒体と呼びます. 熱せられた黒体からは,温度に応じた色の光が放射されます. これを黒体放射と呼びます.ある温度における黒体放射スペクトルは,プランクの法則から求めることができます.
プランクの法則から求めた黒体放射スペクトルの温度依存性を図6に示します.
図7は,図5(a) ~ (d)に示したフィラメントからの放射スペクトルと黒体放射スペクトルを重ね書きしたものです. 温度の上昇とともに,放射スペクトルの強度が増し,放射スペクトルのピーク波長は短波長へと移動しますが,約3200Kの放射であっても,放射エネルギーの大部分は目に見えない赤外の光であることがわかります.
ハロゲンタングステンランプの発光スペクトルは,黒体放射スペクトルとほぼ同じスペクトル形状になります. ハロゲンタングステンランプの輝度が増して,温度が高くなると,放射スペクトルの強度ピークは次第に短波長側にシフトしていき,放射光の色は黄色から白に変化します.
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