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構造色とは: 7. レイリー散乱,ミー散乱

構造色とは

7. レイリー散乱,ミー散乱

一般的には,レイリー散乱,ミー散乱による発色を構造色とは分類しませんが,微粒子によって色が付くという観点で散乱による発色を紹介します.

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7.1 レイリー散乱とミー散乱

物質に入射した光によって誘起された電気双極子からの放出される建機双極子放射を散乱または光散乱と呼びます. 光の波長より十分に小さいサイズの粒子(波長の数十分の一以下)による散乱をレイリー散乱といいます. 電気双極子放射相互の干渉が無視できる程度に希薄な大気中の気体分子などによる電気双極子放射が,散乱として観測されます. 空が青く見えるのは,レイリー散乱のためです.
一方,粒子サイズが波長に対して無視できない散乱源が起こす散乱はミー散乱と呼ばれます. 位相がずれた電気双極子振動の集合体として電気双極子放射光を放ち,電気双極子放射光同士が干渉するために,粒子のサイズや形に依存する複雑な放射パターンになります. また,数〜数10µm の粒子が起こすミー散乱では,波長依存性が低下して,可視領域の光はほぼ同程度の強度で散乱されます. 雲が白く見えるのは,雲を構成する水滴によるミー散乱のためでです.

図7-1 レイリー散乱とミー散乱
図7-1 レイリー散乱とミー散乱
図7-2 レイリー散乱による青い空とミー散乱による白い雲
図7-2 レイリー散乱による青い空とミー散乱による白い雲

7.2 シリカナノ粒子を使った空の色の再現

水に分散させた球形シリカナノ粒子を使ってレイリー散乱,ミー散乱によって色付く空を再現してみましょう.
図7-3(a) に示した粒径 20nmの 場合,粒径が波長に比べて十分に小さく,レイリー散乱が起こります. レイリー散乱では,周波数の4乗に比例して周波数が高く波長が短い光ほど強く散乱されるため,青い散乱光が観測されます. これは,空が青く見える理由と一緒です.
図7-3(b) の粒径 40nm では,レイリー散乱に加えて,ミー散乱も起こっています. ミー散乱は,図7-2 に示したように,散乱を起こす粒子のサイズが波長と競合する場合の散乱です. ミー散乱は,散乱強度の波長依存性が少なく,白い光を散乱します. 雲が白く見えるのは,雲を構成する水滴や氷の粒によるミー散乱のためです. 図7-3(b) では,レイリー散乱による青とミー散乱による白が混じり合っています. まず,レイリー散乱によって青系の色が散乱された後,生き残った赤系の透過光が,さらにミー散乱(多重散乱)されて,ビンの上部全体が赤く色付いています.これは,空が夕焼けに染まるのと同じ現象です.
図7-3(c) の粒径 100nm では,強いミー散乱によって下半分は白雲の状態,上半分は透過光が遮られて黒雲の状態になっています.

図7-3 シリカナノ粒子を使った空の色の再現
図7-3 シリカナノ粒子を使った空の色の再現(ご協力:富士化学株式会社)

7.3 薄明光線

多くの微粒子が不規則に散在する透明媒質内で光が散乱されるとき,入射光の光線が横方向から見える現象をチンダル現象といいます. 自然界で見られるチンダル現象としては,太陽の光が雲の切れ間から放射状に伸びる薄明光線と呼ばれる気象現象が有名です. これは,天使のはしご,レンブラント光線とも呼ばれます.

図7-4 日本海に沈む夕日が創る薄明光線
図7-4 日本海に沈む夕日が創る薄明光線

7.4 五色沼

水中に分散した微粒子の散乱によって,水が色を帯びることがあります. 粒子サイズが数十nmより小さいと,レイリー散乱により青みがかった色になります. 例えば,同じ青い湖でも,水が湧き出す場所や日によって,粒子サイズやそのバラツキ,分散状態が揺らいで,色調が変化したりします. 五色沼の場合,湧水に含まれる多量のアロフェン(アルミニウムの含水ケイ酸塩)の微粒子がレイリー散乱 / ミー散乱を起こして青みの強い乳白色になっています.

図7-5 五色沼
図7-5 五色沼
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