膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

膜厚測定・干渉分光法とは: 4. スペクトル測定

干渉分光法とは

4. スペクトル測定

干渉分光法による膜厚測定では,精度の高い反射率スペクトル測定,透過率スペクトル測定が必要です. ここでは,代表的なスペクトル測定装置としてCCD分光器を使った分光システム,顕微分光システム,ダブルビーム分光光度計を紹介します.

4.1 CCD分光器を使った分光システム

CCD分光器は,光ファイバー接続でサンプル光を分光器に導入して,コンピューターとUSB接続するだけで分光測定できるので,様々な光学配置の分光システムをお手軽に構築できる優れものです. ここでは,CCD分光器を使った干渉分光法のための分光システム構築例を3つ紹介します.
図4-1 は反射率スペクトル測定用にシステムアップした例です.

図4-1 CCD分光器のシステムアップ例 1
図4-1 CCD分光器のシステムアップ例 1

   » 製品紹介: 光学膜厚測定システム DF-1045R

光ファイバー接続された高輝度ハロゲン光源からの白色光を二分岐ファイバーの一方を通してサンプルに照射し,正反射成分をもう一方の光ファイバーを通してCCD分光器に導入します. サンプル側の光ファイバー端には広帯域光ファイバーコリメーター BBFC-03SMA が装着されていて,入射角 0°,ビーム径:約 φ 1 ~ 5mm のコリメート光で反射率スペクトルを測定することができます. 光ファイバーコリメーターは α β 傾斜ステージにマウントされていて,精密な光軸調整を行うことができます. 正しい反射率を得るためには,正確な光軸調整が欠かせません.
図4-1 では,コンパクトな汎用CCD分光器が描かれていますが,サンプルの反射率が低くい場合や,大きなダイナミックレンジが必要な場合などは,高性能CCD分光器を採用することが可能です.

図4-2 は,図4-1 のステージを簡易型にした簡易反射ステージ SS-02R と光源側の光ファイバーをバンドル型にした反射プローブを使用した簡易反射ステージ SS-01R の例です. 反射プローブを使用する方式では,表面が平坦でないサンプルに対してロバストに測定できるという長所があります. しかし,レンズを使用せずにファイバー端から出射されたたままの光をサンプルに照射するため光の利用効率が悪い,測定している領域を特定できないといった難点もあるので,サンプルとの相性を考慮してシステム構成を選びます.

図4-2 CCD分光器のシステムアップ例 2
図4-2 CCD分光器のシステムアップ例 2

   » 製品紹介: 簡易反射ステージ SS-Rシリーズ

図4-3 は,反射率スペクトル測定,透過率スペクトル測定が行えるシステムアップ例です. 干渉分光法では,得られた干渉スペクトルにスペクトルフィッティング解析をして膜厚,屈折率を算出しますが,その際,反射率スペクトルに加えて透過率スペクトルも同時フィッティングすることで,膜厚の決定精度を上げる方法がとられる場合があります. そのような測定解析には,図4-3 のようなセットアップが有効です.

図4-3 CCD分光器のシステムアップ例 3
図4-3 CCD分光器のシステムアップ例 3

   » 製品紹介: 光学膜厚測定システム DF-1045RT

CCD分光器を使った測定では,光源の放射強度の波長分布,光ファイバー,レンズなど光学素子の透過率特性,CCD検出器の分高感度特性など測定光学系の分光特性が全て含まれた反射スペクトル / 透過スペクトルが測定されます. 得られた測定スペクトルを反射率スペクトル / 透過率スペクトルに変換するためには,反射率 / 透過率が分かっている標準サンプルをリファレンスにして測定スペクトルを補正する必要があります.
(4-1) 式に,反射におけるスペクトル補正式を示します.

(4-1) 式

リファレンス測定には, 反射率がある程度高く, 誘電関数から正確に反射率が計算でき, 経時変化のない材料を使用すべきです. 可視領域を中心とした測定では, 自然酸化膜付きシリコン基板などを使用するのがいいでしょう. なお, この反射率スペクトルの算出手順は, 市販の分光光度計を使用した一般的な反射率測定に対しても有効です.
透過スペクトルの場合,通常,光路中に何も挿入しない状態(通称,エアブランク),または光学定数が正確に分かっている石英などの透明基板でサンプル基板と同一のものでリファレンス測定して(4-1) 式で透過率補正を行います.

4.2 顕微分光システム

微小領域における膜厚測定には,顕微分光システムが有効です. 図4-4 に顕微分光システムの構成例を示します.

図4-4 顕微分光システムの構成例
図4-4 顕微分光システムの構成例

   » 製品紹介: 顕微分光システム DF-1037シリーズ

弊社の顕微分光システムは,ニコン製システム顕微鏡とCCD分光器を光ファイバー接続する構成を採用しています. 汎用のシステム顕微鏡を使用するメリットは,偏光ユニット,光路分岐ユニットなど数多くのオプション互換ユニットが利用できること,Cマウントなど一般的なマウント規格で機器類を接続できるという汎用性です. 例えば,CCD分光器をSN比のよい背面照射型冷却CCD分光器に換えて微弱光検出の精度を上げることもできますし,空間分解能を犠牲にしてでも光量が必要な場合は,Cマウント接続する光ファイバーをコア径の大きいものに交換することも可能です. このようなフレキシビリティーは,専用設計の顕微分光装置にはありません.
また,干渉分光法では,ある程度広い波長範囲の干渉スペクトルを解析する必要があります. そのため,目視用に作られているシステム顕微鏡を分光スペクトル測定に適するようにフィルターや落射用キューブを分光測定用広帯域仕様に変更し,ハロゲン光源 + CCD分光器の測定波長範囲をカバーするようにしています.
得られる空間分解能は,使用する対物レンズ,顕微鏡と分光器を接続する光ファイバーのコア径により変わりますが,おおよそ φ 10 ~ 200µm の範囲で選択可能です.

顕微分光システムの場合も,測定手順,解析手順は,「4.1 CCD分光器を使った分光システム」と同様です. つまり,光路を遮断してダーク測定を行い,反射率スペクトル値が分かっているリファレンスを測定し,(4-1) 式を使って反射率スペクトルを求めます.

NAの大きな対物レンズを使用した場合には,スペクトルフィッティング解析の時に,入射角の広がりを考慮しなくてはならない場合があります.

4.3 分光光度計

サンプルの透過率スペクトル, 反射率スペクトルを測定する装置が分光光度計です. 市販されている通常の分光光度計は, 紫外・可視・近赤外の波長領域 (例えば, 200 nm ~ 2.5 µm ) を測定できるものが多く, サンプル光路とリファレンス光路を持つダブルビーム方式が一般的です. サンプル室は, 各種アクセサリーユニットの装着が可能で, 色々な測定に対応できるように設計されています.
図4-5 に, ダブルビーム分光光度計の光学配置例を紹介します.

図4-5 ダブルビーム分光光度計の光学配置例
図4-5 ダブルビーム分光光度計の光学配置例 [2]

[2] 江畠佳定:「DUV 領域の光学素子評価 −エキシマレーザリソグラフィ関連光学素子の評価−」, 分光研究, 49 (2000) pp.3-14.

光源 (紫外:重水素放電管, 可視・近赤外:ヨウ素タングステンランプ) から放射された白色光は, 二つの分光器を通ることで単色光化され, サンプル室に導入されます. サンプルに照射された光は, サンプルで透過 / 反射された後, 検出器で電気信号に変換されます. 図4-4 の光学系は立体配置をしており, 光源, 分光器は垂直面内に, 平面鏡 M9 を境にサンプル室は水平面内に配置されています. 図4-5 の例では, 光源からの光を二台の分光器に通すことで迷光除去率を高め, スペクトル純度の高い単色光を得ることができるダブルモノクロメーター構成になっています.

分光光度計では, 透過率スペクトル測定が最も基本的な使い方です. まず, 所望の波長領域でサンプル光とリファレンス光の強度比 (ベースライン) を測定した後, サンプル光路にサンプルをセットして透過スペクトルを測定します. 測定された透過スペクトルは, 自動的にベースライン補正され, 透過率スペクトルとして記録されます.
一方, 反射率スペクトル測定では, 反射測定ユニットをサンプル室に装着して測定を行います. 通常の反射測定ユニットは, アルミニウム蒸着ミラーなどのリファレンスとの相対的な反射率を測定するもので, まずサンプル光路およびリファレンス光路にリファレンスをセットしてベースラインを測定し, サンプル光路にサンプルをセットし直して測定します. この時, 反射率が値付けされたリファレンスを使用すれば, 測定されたサンプルの反射スペクトルにリファレンスの反射率データを乗ずることで, サンプルの反射率スペクトルを得ることができます.
また, 反射防止膜などの低反射率測定や偏光測定などを行う場合, サンプル光路とリファレンス光路が光学的に等価ではないなどの理由から, うまく測定できないことがあります. その場合, サンプル光路のみを使用して, いわゆるシングルビーム測定を行い, 反射率が値付けされたリファレンスを基準としてサンプルの反射率スペクトルを求めることにより, 改善されることがあります. つまり, リファレンスの反射スペクトル, サンプルの反射スペクトル, バックグラウンドスペクトルをそれぞれ測定し, (4-1) 式を使ってサンプルの反射率スペクトルを求めます.

また, 市販の分光光度計では, オプションで絶対反射率測定ユニットも提供されているので, それを使用する方法もあります. 光学配置の異なるいくつかの方式がありますが, その一例として V-N 法の測定原理を図4-6 に示します [2] .

図4-6 V-N 法における透過率および反射率の測定配置
図4-6 V-N 法における透過率および反射率の測定配置 [2]

図4-6(a) の光学配置で, まずサンプルがない状態の100%ライン測定を行います. 透過率スペクトルを測定する場合, 図4-6(b) のように膜面を光源向きにセットします. 反射率スペクトルは, 図4-6(b) でセットしたサンプルはそのままの状態で, 図4-6(c) のように M2 ミラー, M3 ミラーを反射測定位置に変更して測定を行います. 検知器の感度ムラ, 偏光特性, 光軸の位置ずれなどに起因する精度の悪化を避けるために, 積分球が使用されています. 同測定法では, 透過率測定と反射率測定で, サンプルおよびミラーへの入射 / 反射条件を同一に保つように設計されており, 絶対反射率の測定が可能です.

一般的に, 透過率測定に比べ反射率測定は誤差が混入し易く, たとえ絶対反射率測定ユニットを使用したとしても, 反射率スペクトルが適正に測定されているかどうかを確認することが重要です.

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