膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

膜厚測定・干渉分光法とは: 9. 干渉分光法のデータ解析

干渉分光法とは

9. 干渉分光法のデータ解析

干渉分光法では,反射率スペクトル,透過率スペクトル,吸光度スペクトルなどの測定スペクトルと光学モデルから計算されたシミュレーションスペクトルとのフィッティング解析により,膜厚や光学定数などの物理量を求めます. そのため,光学モデルの立て方,解析の進め方によって,得られる結果に違いが生じる場合があります. ここでは,スペクトルフィッティング解析の大雑把な流れを確認しておきましょう.

9.1 スペクトルフィッティング解析の流れ

スペクトルフィッティング解析は,サンプルの光学モデルを基に計算されるシミュレーションスペクトルと測定スペクトルをフィッティングすることにより,膜厚や光学定数などのサンプルパラメーターを決定する解析法です. スペクトルフィッティング解析では,光が入射することで物質が応答するという因果律(Kramers-Kronig 関係)によって物質の光学定数 (屈折率: n ,消衰係数 κ ) が決定されることを基本にして,分光スペクトルに含まれる材料物性情報の定量的な解析を行います. フィッティング解析では,次に示すような 5 つのステップにより最終的な結果である膜厚や光学定数を決定することができます.

図9-1 スペクトルフィッティング解析の流れ
図9-1 スペクトルフィッティング解析の流れ

(1) 測定スペクトル: 分光光度計, CCD 分光器などを用いてサンプルの反射率スペクトル,透過率スペクトル,吸光度スペクトルなどを測定します. サンプル基板には光学定数スペクトルが既知のものを用いるか,サンプルに使用したものと同一基板のスペクトルを測定し,以下の手順に従って予め基板の誘電関数を求めておきます.

(2) 光学モデルの構築: まず,サンプル各層の誘電関数モデルを誘電関数ライブライリーから選択するか振動子モデルを使って作成します. 次に,サンプルの層構造を記述します. さらに,求めたい膜の光学定数スペクトルを推測して,誘電関数モデルの各パラメーター初期値を調整しておきます. 多くの場合,光学定数ライブラリー,文献値などを基に,予想される膜の誘電関数モデルを予め作っておくことが有効です. また,各層の膜厚初期値を決め,光学モデルのどのパラメーターをフィッティング変数にするかを選択します.

(3) スペクトルシミュレーション: 作成した光学モデルから測定スペクトルに合わせて,反射率,透過率,吸光度のシミュレーションスペクトルを生成します. この時点では,測定スペクトルとシミュレーションスペクトルの形状は,一般的に異なっています. (4)フィッティングを実行する前に,測定データとシミュレーションスペクトルを見比べて,できるだけ光学モデルの各パラメーター初期値を修正しておくといいでしょう.

(4) パラメーターフィッティング: 測定データとシミュレーションスペクトルのフィッティング誤差が最小になるように,スペクトルフィッティング解析ソフトウエアが各パラメーター値を自動調整します. フィッティング誤差が所定の値を下回るか,所定の計算反復回数の上限に達するとフィッティングは打ち切られ,収束結果として膜の光学定数,膜厚などの値が得られます.

(5) フィッティング結果の評価: 得られた収束結果のフィッティング誤差が大きかったり,物理的にあり得ない場合,局所的な極小値(ローカルミニマム)に収束している可能性があります. もちろん,この時の収束結果は解として不適当なので,(2) に戻りシミュレーション条件を再検討する必要があります. 具体的には,光学モデルを構築し直す(例えば,誘電関数モデルの変更,表面ラフネス層の追加など),より適正な初期値を探す,フィッティングに使用するパラメーターを選択し直すなどの作業を行った後,再度フィッティングを実行します. 納得が行く収束結果が得られるまで,(2) ∼ (5) の手順を繰り返します.

9.2 干渉分光法を使った膜厚測定の実際

キャリブレーション膜厚データ付きのシリコン熱酸化膜(SiO2)をサンプルにして,干渉分光法を使って膜厚測定を行いました. サンプルにしたキャリブレーションデータ付きシリコン熱酸化膜は,膜厚が異なる6領域が1枚のウエハに成膜されていて,単一波長のエリプソメーターで測定したキャリブレーション膜厚データシートが添付されています.

図9-2 干渉分光法を使ったシリコン熱酸化膜の膜厚測定
図9-2 干渉分光法を使ったシリコン熱酸化膜の膜厚測定

いずれの膜厚に対しても,非常によい収束が得られています. 測定膜厚値とメーカーから提供されているキャリブレーションデータ(公称膜厚値)を比較しすると,いずれの膜厚領域でも,膜厚の違いは数ナノメーター以下であり,良好な膜厚値の相関が得られています.

干渉分光法を使った膜厚測定の実例は,膜厚測定 アプリケーションのページをご参照ください.

   → 膜厚測定アプリケーション

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